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最高裁判所第三小法廷 昭和31(オ)549 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人菅原秀男の上告理由第一点について。

論旨は、原判決の理由の不備、くいちがいを主張するに帰する。然し、記録によ

ると、(一)の(1)指摘の丙四号証の一、二は第一審以来その成立につき当事者

間に争いがあるのに上告人においてその真正に成立したことを全く立証していない

ものであり(作成者Dは被上告人主張事実立証のため訊問されているが、右点には

触れていない)、同(3)指摘の丙一二号証もその成立につき争いがあるのに、そ

の真正に成立したことを確認するに足る証拠資料の存しないものであり、また(一)

の(2)指摘の丙一四号証の一、二、三、同(3)指摘の丙八号証の三、九号証の

一、二、三、一〇号証の一、二、一三号証の一は何れもその成立につき当事者間に

争いがなく、(一)の(4)指摘の検証の結果はその調書に明らかであるが、これ

らは係争土地が公簿上のa町b番のc山林、de番のf山林の何れにも属さなかつ

たこと、その他原審の認定事実に牴触するものでないことが明らかであり、原判決

は以上所論の証拠をすべて採用しない趣旨を判示したものであることは判文の全趣

旨よりこれをうかがうことができる。更に所論(二)指摘の証人Eおよび原審にお

ける上告人本人の各供述については、原判決は「措信し難いが」云々と判示してい

ること明らかである。

原判決には所論の違法なく、論旨はすべて採用し得ない。

同第二点について。

論旨は先ず判断遺脱、理由不備をいうけれども、原判決は係争土地が上告人主張

に係る公簿上「字de番のf山林」(以下たんに「e番のf山林」ということがあ

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る)と表示されている土地に含まれているものではないこと、現在上告人は公簿上

「e番のf山林」と表示されている土地を所有していることになつているが、それ

は係争土地が公簿上「e番のf山林」と表示されている土地と隣接していることか

らして、恰も元来その一部であつたかの如く仕做す意図の下に上告人がEからこと

さら高価に買受けたものであつたこと、その他の事実を認定して、係争土地の所有

権が上告人に属することを否定しその請求を排斥しているのであること、判文上明

瞭であつて、この点の原判示に不明確の部分等所論の違法はない。

論旨は更に民訴一八六条違背をいうけれども、被上告人は「公簿上「e番のf山

林」と表示されている土地は係争の土地の東方に隣接して存在するのであつて、係

争の土地を含むものではない、係争の土地が仮りに公簿上「字a町b番のc、g、

h山林」と表示されている土地の一部を成すものでないとしても、少くとも被上告

人の前主Dはその所有権を原始的に取得し、被上告人がこれを承継取得したもので

ある」ということを主張していることは記録上明らかであるから、原審が係争土地

は公簿上「e番のf山林」あるいは「字a町b番のc、g、h山林」と各表示され

た土地の一部を成すものでなく、公簿上地番の表示されていない土地であること、

その所有権が実質上これを取得したDから被上告人に移転したこと等を認定判断し

たことは、当事者の主張しない事実もしくは事項について認定判断したものといえ

ないこというまでもない。所論は理由がない。

同第三点について。

論旨は上告人がした増歩登記を違法無効とした原審の判断を争うけれども、係争

土地が登記簿上「e番のf」「a町b番のc、g、h」と表示された山林の一部で

なく公簿に全くその地番の表示されていない土地である事実は原審の認定したとこ

ろであるから、しかる以上、原判示のようにこれを既登記の土地の一部を成してい

るものの如く仕做してその増歩すなわち地積増加の登記手続をしてもこれを適法有

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効のものと解しえないこと明瞭である。原審の判断は相当であり、右論旨は理由が

ない。

論旨は更に、審理不尽、理由不備、その他の法令違背をいうけれども、その実質

は原判決の事実認定を非難し原判示にそわない事実に基いて法令違反を主張するも

のにすぎず、前提を欠き採用することができない。

同第四点について。

論旨は原審が当事者の主張しない事項につき判断したというけれども、記録によ

れば、上告人は「係争土地につき結局地積増加の登記手続をしたことによつて登記

したものであり第三者に対抗し得るに至つたのに、被上告人は何らの登記手続をも

経由していないから、仮りに同人が係争土地を買い受けたとしてもこれを以て上告

人に対抗し得ない」旨を自ら主張していること明白であるから、この点につき増歩

登記は違法無効で上告人にその所有権取得原因はないとし、その所有権取得を否定

し、被上告人に対する上告人の請求を排斥した原判決は何ら民訴一八六条に違反す

るものではない。論旨は理由がない。

更に原審が適法に認定判断した事実によれば、被上告人が本件係争土地につき実

質上所有権を取得したもので、上告人の右係争土地(山林)に対する増歩登記は無

効であつて、同人はこれが所有権を取得したことはないのであるから、被上告人が

民法一七七条にいわゆる第三者に当るか否かの問題を生ずるまでもなく、上告人の

被上告人に対する請求は理由がないことが明らかである。「被控訴人が右第三者に

あたるもの」云々の原審判示部分は無用の判示にすぎないもので、原審に所論違法

はない。論旨はすべて理由がない。

同第五点について。

論旨は、証拠の欠缺、採証法則、経験則違反をいうが、記録を精査するに、証人

F、同E、同G、同D、同H、同Iの各証言及び上告人本人の供述その他原判決が

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採用挙示した関係証拠を採証法則、経験則に従つて綜合判断するときは原審認定に

係る事実を認め得べく、原判決の事実認定には所論の違法はない。その余の所論は

原審の右事実認定及び証拠の取捨判断の非難に帰し採用することができない。

同第六点について。

論旨は、原判決が証拠を採用しなかつた理由の説示を欠くのは理由不備であると

いうが、裁判所が証拠を排斥するにつきその理由を説示しなくとも必ずしも違法と

いうことができない。論旨は理由がない。

同第七点について。

論旨は理由不備をいうに帰する(論旨は、原審が所論丙一五号証の一、二及び証

人Jの証言をその事実認定の資料としなかつたこと自体を争う趣旨でないこと明ら

かである)が、所論の通り、原審が、書証の真正に成立したか否かの補助的事実を

確定することなく直ちにその実質的証拠力につき判断して否定し、あるいは牽連事

件において取り調べられただけで本件で援用されていない証人の証言につき誤つて

判示言及してその実質的証拠力を否定したとしても、原判決の事実認定及び証拠関

係に照らせばその瑕疵は原判決に影響を及ぼすものといいえないから、結局所論は

採用することができない。

同第八点について。

論旨は民訴一八六条違反ないし判断遺脱をいうが、記録によると、上告人は本訴

において、係争の土地が公簿上「e番のf山林」と表示されている土地の一部を成

しており、右「e番のf山林」の土地は上告人の所有に属するから、法律上これと

一体を成す右地上所在の立木は上告人の所有に属するとし、その所有権の確認等を

求めるので、原審は係争土地は公簿上「e番のf山林」と表示されている土地の一

部を成しているものではなく法律上全く別箇の不動産である旨を認定判断し、上告

人の請求をすでにその前提において失当で「すべて理由がない」として棄却してい

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ること明らかであるから、原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。

上告代理人宗宮信次、同真木桓、同鍵山鉄樹、同川合昭三の上告理由第一点につ

いて。

論旨は、訴外Jが先ず係争山林を訴外Dに譲渡し次いで上告人に譲渡し、いわゆ

る二重譲渡をしたと主張しこれを前提として法令の解釈適用の誤り理由不備をいう

けれども、原判決は右第一の譲受人Dが係争の山林(立木を含む)所有権をその後

時効により原始的に取得したものであること、上告人は係争山林(立木を含まない)

をJから譲受けたものでないこと及び係争山林については公簿上何人のためにも適

法有効な何等の登載も為されていないこと等を認定しているのであるから、所論は

判示にそわず前提を欠く。 (原審認定の事実関係の下においてはDは係争の山林

所有権を取得し、Jは何らの権原を有せず従つて上告人は右所有権を取得するに由

ないとした原判示は相当である。)論旨は採用できない。

同第二点について。

論旨は、上告人は被上告人の登記欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三

者であるから、被上告人はその所有権取得を以て上告人に対抗し得ないと主張し、

この点に関する原判決の法令違反をいうが、しかし、原判決は、上告人は係争山林

自体(土地)を買受けたのでなく地上所在の立木を買受けたにすぎない者(一般債

権者)であるのみならず、その売主は係争山林(立木を含む)につき何らの権原を

有するものではなかつたこと、その他の事実を確定して、上告人は係争山林(不動

産)につき物権を取得した者、特殊の債権を有する者等でもなく、真実の所有権取

得者たる被上告人に対する関係においては不法行為者にほかならないから被上告人

の登記欠缺を主張するにつき正当の利益を有する第三者に該当せず、被上告人は登

記なくして当然その所有権取得を以て不法行為者たる上告人に対抗し得るものであ

る、と判示していること判文上明白であり、右判示は相当である。所論は判示にそ

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わない主張であつて、前提を欠き採用することができない。 (論旨引用の判例は

本件に適切でない。)

同第三点について。

論旨は原判決の認定した事実と異る事実を主張しこれに基いて法令違反をいうも

のであるから、前提を欠き、採用することができない。

同第四点について。

論旨は民訴一四七条の解釈の誤をいうが、所論は結局第一審裁判官猪狩判事は判

決原本に基かずして第一審判決を言渡したものでその言渡は民訴一八九条一項所定

の方式に違反するというに帰するから、原審が第一審判決言渡調書には判決原本に

基き主文を朗読して判決の言渡がなされたことの記載があることに照らし、この記

載に反する口頭弁論の方式に関する事実を主張することは許されないとし右主張を

排斥したのは相当であつて、原判決には所論の違法はない。

同第五点について。

論旨は判断遺脱をいうけれども、記録によると、被上告人が係争地域の山林及び

同地上所在立木は自己の所有に属すると主張しその所有権に基いてK、Lに対し右

地域内立木の伐採搬出の禁止を訴求し、K、L両名が右所有権の帰属を争いその所

有者はJであると主張し、該事件が第一審に審理繋属中(平支部、昭和二六年(ワ)

第二号事件)、上告人が右山林立木は全部自己の所有に属するから右訴訟の結果自

己の権利を害せられると主張して右訴訟当事者全員に対しその所有権の確認を求め

る(主参加訴訟、民訴六〇条)とともに、被上告人に対し同人のした立木伐採搬出

禁止仮処分決定(同支部、昭和二六年(ヨ)第一号事件)正本に基く執行不許の裁

判を執行裁判所に併せ訴求(執行参加の訴たる第三者異議の訴、民訴五四九条)し

たものであること(同支部、昭和二七年(ワ)第八八号事件)が認められ、その主

参加訴訟、第三者異議訴訟は何れも適法なことが明らかである。されば原審が所論

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の点に関し直ちに本案につき認定判断したのは右各訴訟を適法と判断したからにほ

かならないこというまでもなく、原判決には到底所論の違法ありというを得ない。

同第六点について。

論旨は判断遺脱をいうが、被上告人が原審において所論のような上告人に対する

所有権確認の新請求をした事実は記録上認められないから、所論は前提を欠き採用

できない。(なお、所論昭和二九年一月二〇日付請求の趣旨訂正申立書はK、Lに

対する従来の請求の趣旨中係争山林の地域に関する表示が必ずしも明確でなかつた

ため、その表示を具体的に訂正する趣旨のものでしかなく、上告人の主参加訴訟に

つき反訴等を提起し上告人に対して新に所有権確認を求めるような趣旨は全く現わ

れていないものである。)

論旨は更に、原審が第一審の判断と矛盾する判断をしたのは違法であるというが、

次点に説示するとおり、民訴六〇条による主参加訴訟は当然民訴六二条の適用を受

ける必要的共同訴訟となるわけではないから、上告人がK、Lに勝訴し被上告人に

敗訴する結果を生じたとしてもこれを違法というを得ないこと勿論である。

同第七点について。

論旨は上告人が提起した所有権確認の訴は必要的共同訴訟であると主張するに帰

する。けれども、民訴六二条にいわゆる「合一確定」の要求は厳格に同一人に対す

る判決の効力の衝突を避けるべき法律的必要の存する場合に限られているのであつ

て、単に、共同訴訟人に対する請求が本件主参加訴訟の如く同一権利の主張である

ため、もしくは、同一の事実または法律関係に基因するため理論上くいちがう認定

ができない筈であるというような場合、あるいは、更に目的、手段の関連のあるた

め数人に対し権利の確定を求めるのでなければ訴訟の終局の目的を達し難いという

ような関係のあるに過ぎない場合をまで含むものではないと解すべきである。のみ

ならず、所論は上告人の提起した訴訟が主参加訴訟であることをその一根拠とする

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もののようであるが、民訴六〇条の主参加訴訟は係属中の訴訟とは別箇に提起され

るものであつて必ずしも当然これと併合審理されなければならないものではないか

ら、この点の所論もあたらず、結局、上告人の提起した被上告人及びK、Lに対す

る所有権確認の訴については、いわゆる合一確定の法律的必要は認められないから、

論旨は理由がない。(論旨引用の判例は、立木所有権移転登記抹消等請求事件に関

するものであり、右の点につき何ら所論の如き判示をしているものではなく、本件

に適切でない。)

同第八点について。

論旨は訴訟費用負担に関する原判決主文が明確を欠くというが、本件は、被上告

人のK、Lに対する立木伐採搬出禁止請求の本訴訟と上告人の被上告人等に対する

所有権確認等請求訴訟とが併合審理判決されたものであつて、右両訴訟に明確に区

別し得べきものであつて、その訴訟費用負担に関する原判示は明確であり、この点

につき所論違法は認められない。

同第九点について。

論旨は審理不尽、理由不備をいうが、記録によれば、本件当事者全員は原審にお

いて「係争の地域が被上告人所有に属する字a町b番のc、g、hにあたるか上告

人所有に属する字de番のfにあたるかが主たる争点である」旨を述べ、公簿上右

表示された土地が夫々被上告人、上告人の所有に属することを争わなかつたもので

あること明らかであるから、所論の通り判示した原判決には、所論のような違法は

ない。論旨は理由がない。

同第一〇点について。

記録によると、K、L両名は原審に於て係争地域内の立木を伐採搬出した旨の被

上告人の主張事実を争つていないこと明らかであり原判決もその旨判示しているの

であるから、所論のような違法はない。のみならず、右の点は純粋に被上告人とK、

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Lとの間の本訴訟のみに関する部分であつて上告人の請求に関係はないのであるか

ら、所論は到底採用するに足りない。

同第一一点について。

論旨は原判決主文第二、第三項に所謂「別紙掲記の山林」の範囲が明確を缺き特

定されていないというが、本件係争の地域が被上告人の請求趣旨掲記の地域すなわ

ち原判決添付図面(イ)ないし(ル)点を順次連結し(イ)点に戻る線を以て囲ま

れた範囲であることについては当事者間に争いなく、右主文の表示もこれを指すこ

と判文上極めて明らかであるから、原判決には所論の違法なく、論旨は理由がない。

同第一二点について。

論旨は理由の不備、くいちがいをいうけれども、原審は所論証人M、同E、同N

の証言、上告人の供述中云々の点に関する部分は措信し得べきものとしてこれを採

用し、云々の点に関する部分は措信し得ないものとしてこれを排斥する趣旨を示し

ていること原判文上明らかであり、供述の一部を採用し一部を排斥するについては

必ずしもその理由を判示するを要しないのであるから、原判決には所論の違法なく、

論旨は理由がない。

同第一三点、第一四点について。

論旨の実質はいずれも原判決の証拠の取捨、事実認定の非難であつて上告適法の

理由とならない。

同第一五点について。

原判決は係争地域をOに次いでF、Jほか八名が順次占有して来たものであるこ

と、DはJほか八名から係争地域の土地を右b番のc山林の一部であると指示され

て買受け爾来これを平穏公然善意無過失に占有して来たものであること等を認定し

て結局Dが係争地域の土地、立木所有権を時効により取得したと判断していること

明らかであるから、原判決事実認定中に論旨(一)所論の瑕疵があるとしても、そ

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れは原判決の右主要事実認定に影響を及ぼさない一経過事情に関するものに過ぎな

いから、論旨は理由がない。論旨(一)のその余の所論は単なる認定非難に過ぎな

い。

論旨(二)は審理不尽、理由不備をいうが、記録によれば原審が所論甲二号証、

同三号証の二を事実認定の資料としていること、所論の点に関する証人J、同Gの

証言を措信し難いとして排斥していること、また、所論丙一四号証は公簿上字a町

b番のc山林と表示されている土地とE所有に係るb番i山林との境界線等係争地

域と全く関係のない事項に関するものであること明らかであり、その他記録、証拠

資料を検討しても原判決に所論の違法あることは認められない。所論は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 垂 水 克 己

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 高 橋 潔

裁判官 石 坂 修 一

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